子供のリトミックと楽器演奏
子供のためのリトミック。なんの目的でお稽古するのでしょう?
情操教育だったり音感教育を謳い文句にしているところが多いと思います。「音楽遊び」を中心として、「イメージを体で表現」したり、「グループで表現」したり、「即座に反応して表現」したり・・。
結局のところ頭の中でぐるぐると内観しているだけでなくて、他の人にも即座にわかってもらえるように反応することができると、リトミック的には出来の良い子になりがちです。かえって言動や行動が年齢より大人っぽい子はノリが悪くて「周りと同調するのに苦労したんだけど。」後で語っていた・・なんて小耳に挟んだことがあります。
リトミックに来て、楽しそうにはしゃぎながら動き回っていれば、お母さんも連れてきた甲斐がありますが、せっかく来ても泣いちゃったり、怖がってお母さんにしがみついたままで終わってしまっても、まぁしょうがないかな・・くらいでちょうどいいと思います。
リトミックの大きな柱の一つに「音楽による即時反応」という要素があります。お受験でのリトミックは感受性を見ているだけではなくて、「大人の指示に正確に反応して行動できるか」を見られているのかもしれません。療養の施設では「赤信号の絵が出て音楽が止まったらストップする」「青信号を見たら歩け」みたいな訓練っぽいことをリトミックと称して行っていました。
「四分音符で歩け」「二分音符でゆっくり歩き」「八分音符で走れ」・・あんまり音楽的でも芸術的でもない代物です。動きのためのピアノ伴奏、「音価やリズムが固定化した和音の羅列みたいなもの」は音楽とは言えないような気がします。が、大学のリトミックコースの適性試験はこんな調子でした。しかも、17歳18歳になってもできない人がいた!?私のグループの中で一人だけですが、ずっと走っている人がいました。音大受験生でもこの程度です。まぁすごい前の話ですが・・
大人でリトミック経験者、(例えばリトミック指導者育成コースに所属しているような)で、リズム感がない人もいます。実際にピアノを弾かせるとリズム音痴だったりします。何故なら楽器演奏ではリトミックで養ったくらいのリズム感では役に立たないからです。
音楽に合わせて「1、2、3、4、」とカウントをとったり手拍子したりすらできなかったら、確かにリズム感がないです。リトミックのように大きく体を動かすことでリズム感を養えるでしょう。
しかし、一般的にはそれくらいできる人が多いです。それが演奏で発揮できない場合のリズム感をリトミックで鍛えることは不可能です。楽器は微細な筋肉を連動して演奏します。大きな筋肉を大雑把に使ってステップするような「リズム運動」をすると楽器演奏に必要なタイトなリズム感は失われがちです。私はリトミックを経験して「大学生になって、こんなことはすべきではない、自分の音楽に悪影響があるかも」と思うようになりました。
リズム感を向上させたかったら、自分が上達したい楽器を使って鍛えなければいけません、扱う楽器によって筋肉の感覚が違うからです。歌うのか、息を使うのか、弦を弓で弾く(ひく)のか指で弾く(はじく)のか、鍵盤をタッチするのか・・
リトミックのためのリトミック教室が花盛りです。が、音楽と一緒に体で感じるリズム感を経験させてあげたいなら、ピアノなどの楽器に併用してクラシックバレエや各種ダンスを経験させてあげた方が良いような気がするこの頃です。
長い間、大学のリトミック部門に従事しての結論なので、自分自身がとても残念な気がします。
2016.04.02│コラム