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お知らせ

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「脱力」と「緩める」の違い


 

私は国立音楽大学のリトミック専攻の学生でした。リトミックを長じて学んでいても、一定の気づきが済んで仕舞えば、それ以上の効果が期待できないことは、早々に気がつきました。それはリトミック専従の講師陣が何かしら演奏の専門家でなくリトミックのためのリトミックになっている様に感じられたからです。
 

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対して、リトミック専攻の面倒を見てくださっていた作曲家の先生方、指揮者の先生。大変有能な方もいらっしゃいましたが、リトミックに熱心に関わってくださっています。リトミックの三要素である、リズム運動(舞踏ではない)、即興演奏、ソルフェージュに音楽家が成長する可能性を見出していたのかもしれません。思えばリトミックの創始者ダルクローズも作曲家でした。
国音リトミックの先生方の教則本、シリーズも3巻目になって、ネタが尽きてきたのでしょう。「タコのようにグニャグニャになって脱力してみましょう」なるページが有りました。ピアノ教室でタコの真似なんて事、自分が手本を見せるのも嫌だし自分がしたくない事を他人にもさせるわけにはいかないでしょうって思いました。このように、実際のところ「演奏には役に立ちそうでないリトミックのレッスン」は意外にも多いのです。
 

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またまた前置きが長くなりましたが、肉体が、その振る舞いを崩さず脱緊張する状態を表す良い言葉が見つからなかったので、取り敢えず脱力という言葉を使っていましたが、太極拳のクラスでの特訓で教えてもらった「緩める」という状態は、楽器演奏でも応用が利きそうです。
 

どういうことかといえば、
 

例えば、腕を真っ直ぐ伸ばします。(前方向に伸ばすと分かりやすいかも)その際関節も力を入れて肘も手首も曲がらないようにします。指先の方にエネルギーが集まっている事が感じられたら、そのエネルギーを体感に引き戻してやります。この時の状態が「緩んだ」ということだそうです。
 

腕の見た目は、先ほどと同じで伸びていますが、成る程、関節や筋肉の状態がかなり違ってきます。ピアノを弾くテクニックで、腕や手首を有機的な動きをさせず、一見とても無機的に見える運動をするテクニックもたくさんあります。
 

U先生の手の動き方は意外な程無機的な時が有ります。柔らかく手や腕を使って有機的な動き方をすると、時には瞬発力が無くなったり、無駄な動きが派生するために、素早く鍵盤を移動できない、弊害が時にはあるのです。
 

U先生は、「腕から指先までが太鼓のスティックになった様に、スティックは力が入っていなくてあの形になっているでしょう。」みたいな感じで教えてくれます。これも肉体の振る舞いを変えないで、中が緩んだ状態を話しているらしく、太極拳でもらってきた新ネタを披露すると、成る程納得という感じで聞いてくださいました。
 

この日のレッスンでは、「ただ前屈するより、三回その場回りをしてから前屈するとよく曲がるようになっている。」も実演しました。「その場で回る」という行動と「体を曲げる」という行動が脳内で結びつかない隙をついて前屈するので、体が身構えたり緊張しないらしいのです。先生は「三回その場回りをしてからピアノを弾いたら効果がありそうだけど本番では無理だなぁ」と言っていましたが、生徒さんのトラウマになっているパッセージとかの練習を回ってから弾いてもらうとか、いろいろ使えそうです。
 

人によっては騙されにくい脳の持ち主もいるので万人には効かないらしいですけど。
 

とりあえず「脱力と緩める」の違いを教えてくださった太極拳の先生に感謝です。
 

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