とりあえずの太極拳

ズルズル通っていた近所のフィットネスクラブが、3月末でクローズしてしまいました。行ったところで何かしらのストレッチとちょっとした筋トレ、または緩い有酸素運動ぐらいでしたが、身体を動かす機会が全く無くなるのも健康に悪い気がしています。
太極拳のクラスは、有志でサークルを作りました。それに乗っかって、週一回、鷺ノ宮体育館で太極拳を習うことにしました。
太極拳はキツイのか緩いのか、疲れるのか楽なのか…それすらさっぱり分かりません。
見た目のポーズや動きが合っているかどうかよりも、その時々の身体の中がどんな状態なのかが大切なんだそうです。関節を窮屈にさせないで、骨盤を広げた状態で動いていると、おのずと正しい位置に手や足がきて、後の動作はその「あらわれ」なんだそうです。
この先生の太極拳は「筋力を使わずに自分の身体を動かす」という究極に無理のない身体の使い方を学べるそうです。
モダンバレエなどの呼吸を伴った動きと似ているようです。息を吸って肺が広がり胸郭から腕に伝わる、息を吐いて肺がしぼみ動きが末端に伝わってゆく・・・国立音楽大学の「ボディテクニック」の授業で習いました。「ボディテクニック」は真夏の一週間、暑さ地獄の体育館で、9時5時というスパルタな講義で、たった一週間で猫背が治りました。
その頃はまさか学生時代から卒業してもボディテクニックの伴奏を弾き続けるとは思ってもいなかったのですが・・・

話が横道に逸れてしまいました。この先生の太極拳は「筋力を使わずに自分の身体を動かす」という究極に無理のない身体の使い方なので、ヨガのように心身の「弛緩」を味わうために、筋肉を「緊張」させ刺激を与えることもなく、エアロのような筋肉を自分の意思で一生懸命動かして筋力を使うこともありません。
勉強になると思いました。若いうちはピアノも自分の筋力をいっぱい使ってがむしゃらでも弾けますが、音の鳴りが全然違います。若いうちから学んでも損はありません。
ピアノは指先の「重さの掛け替え」をいかにスムーズに行うかが勝負です。最初のモーションから、いかに動きを止めないでスムーズに動けるか、最初のモーションがきっかけになって次の所作が「あらわれる」とピアノも答えてくれると思います。
鍵盤上の2次元で見るのではなく高さを加えた3次元で捉え、いかに手や体が振舞うか、「音楽を視覚化する」はリトミックの専売特許ですが、「手の振る舞いがそのまま音になってあらわれる」と考えていいと思います。手や体がどんな動きをしているかチェックするといろいろなことが分かってくるかもしれませんね。
体を使いって動くことは、いろいろ共通点や参考になることがありそうですね。今回は大人向きの話になってしまいました。

2016.04.06│コラム
子供のリトミックと楽器演奏2

リトミックは明確な目標にたどり着くためのショートカットとして「利用」すると効果を発揮します。この場合の「効果」とは、「何かができる様になる」とか「能力が高まる」という定義です。または、アイデアが湧くキッカケになる事も含まれます。音楽に合わせて身体を動かしたら、普通に楽しいので、「楽しいと感じる」事や「ストレスから解放される」の様な事は外しておきます。
目的に特化したリトミックとしては、超アカデミックな海外のバレエスクールにリトミックのクラスが有ったり、演劇の練習にリトミックを体験する時間があったりもします。
日本のモダンバレエの草創期は、リトミックと舞踏の境界線が曖昧でした。
近年はリトミックが幼児の音楽教育のメソッドと思われがちですが、実はリトミックの要素の一部を拡大解釈して利用しているのです。で、他の分野でも同じ様にリトミックが行われているのですが、指導のされ方や内容は全く違ってみえます。でも、リトミックなのです。

ところで、このページを見ていらしている方で興味が有るのは「プレピアノレッスンとしてのリトミック」ではないでしょうか?
特に、お子さんにリトミックを習わせたいと考えていらっしゃるお母様。お話しさせていただくと、「今は難しいかもしれないけど、最終的にはピアノが弾ける様になって欲しい。」
リトミックしか考えてなくて教室に通われていても、1年くらい経つと「このままリトミックだけではしょうがないので、ピアノが弾ける様に指導して欲しい。」と、ご要望が変わります。
結局は100%の保護者様が「入り口がリトミック、そこから楽器演奏につなげたい」というお考えなのです。

現代のピアノ教材はよく出来ていて、わざわざリトミック教室に行って、「ライオンさん」と「ネコさん」になって二分音符と四分音符を歩き回らなくても、ピアノの教則本の音価の説明のところに「ライオンとネコのイラスト」が分かりやすく書かれています。クラップやその場ステップでも、充分子供達は理解できます。(ライオンさんとネコさんは例えの話です)

楽器演奏に繋げるリトミックが希望なら、その楽器専門でリトミックの素養がある先生から「ピアノ+リトミック」のレッスンをしてもらうか、リトミック教室とピアノ教室の両方を持っている教室に通うほうが、無駄なく無理なく楽器演奏にスライド出来るでしょう。
リトミックをする事が演奏や音楽表現をする上でのショートカット(近道)になれば良いのですが、リトミック専従の教室だと、リトミックのためのリトミックをして、かえって回り道になってしまう事もあります。
ただリトミックを楽しめば良いのか、演奏に繋げたいのか、保護者様やご本人の目的や目標を明確にしてから教室探しをすると良いでしょうね。
言い忘れました、この場合お子様の年齢は3歳から5歳くらいです。それ以下の年齢でしたら、保護者様と一緒に音楽遊びをするグループも良いですし、それ以上の学齢でしたら、いきなり楽器を習わせちゃったほうが良い…と私は考えています。(個人差はありますが、大抵4歳過ぎれば、充分ピアノのレッスンを受けられるように成っています。)
ちょっと極論気味になりましたが、教室探しの参考になるになれば良いかなっと思います。

2016.04.03│コラム
子供のリトミックと楽器演奏

子供のためのリトミック。なんの目的でお稽古するのでしょう?
情操教育だったり音感教育を謳い文句にしているところが多いと思います。「音楽遊び」を中心として、「イメージを体で表現」したり、「グループで表現」したり、「即座に反応して表現」したり・・。
結局のところ頭の中でぐるぐると内観しているだけでなくて、他の人にも即座にわかってもらえるように反応することができると、リトミック的には出来の良い子になりがちです。かえって言動や行動が年齢より大人っぽい子はノリが悪くて「周りと同調するのに苦労したんだけど。」後で語っていた・・なんて小耳に挟んだことがあります。
リトミックに来て、楽しそうにはしゃぎながら動き回っていれば、お母さんも連れてきた甲斐がありますが、せっかく来ても泣いちゃったり、怖がってお母さんにしがみついたままで終わってしまっても、まぁしょうがないかな・・くらいでちょうどいいと思います。
リトミックの大きな柱の一つに「音楽による即時反応」という要素があります。お受験でのリトミックは感受性を見ているだけではなくて、「大人の指示に正確に反応して行動できるか」を見られているのかもしれません。療養の施設では「赤信号の絵が出て音楽が止まったらストップする」「青信号を見たら歩け」みたいな訓練っぽいことをリトミックと称して行っていました。
「四分音符で歩け」「二分音符でゆっくり歩き」「八分音符で走れ」・・あんまり音楽的でも芸術的でもない代物です。動きのためのピアノ伴奏、「音価やリズムが固定化した和音の羅列みたいなもの」は音楽とは言えないような気がします。が、大学のリトミックコースの適性試験はこんな調子でした。しかも、17歳18歳になってもできない人がいた!?私のグループの中で一人だけですが、ずっと走っている人がいました。音大受験生でもこの程度です。まぁすごい前の話ですが・・
大人でリトミック経験者、(例えばリトミック指導者育成コースに所属しているような)で、リズム感がない人もいます。実際にピアノを弾かせるとリズム音痴だったりします。何故なら楽器演奏ではリトミックで養ったくらいのリズム感では役に立たないからです。
音楽に合わせて「1、2、3、4、」とカウントをとったり手拍子したりすらできなかったら、確かにリズム感がないです。リトミックのように大きく体を動かすことでリズム感を養えるでしょう。
しかし、一般的にはそれくらいできる人が多いです。それが演奏で発揮できない場合のリズム感をリトミックで鍛えることは不可能です。楽器は微細な筋肉を連動して演奏します。大きな筋肉を大雑把に使ってステップするような「リズム運動」をすると楽器演奏に必要なタイトなリズム感は失われがちです。私はリトミックを経験して「大学生になって、こんなことはすべきではない、自分の音楽に悪影響があるかも」と思うようになりました。
リズム感を向上させたかったら、自分が上達したい楽器を使って鍛えなければいけません、扱う楽器によって筋肉の感覚が違うからです。歌うのか、息を使うのか、弦を弓で弾く(ひく)のか指で弾く(はじく)のか、鍵盤をタッチするのか・・
リトミックのためのリトミック教室が花盛りです。が、音楽と一緒に体で感じるリズム感を経験させてあげたいなら、ピアノなどの楽器に併用してクラシックバレエや各種ダンスを経験させてあげた方が良いような気がするこの頃です。
長い間、大学のリトミック部門に従事しての結論なので、自分自身がとても残念な気がします。

2016.04.02│コラム