褒めること 叱ること

「褒めたら子供が駄目になる」とか「認めて褒めて愛して育てる」とか・・・いろいろな本が出版されていて、アマゾンなんかでレビューを見ると全部説得力がありそうなんですが。褒めるより叱ることって難しいですよね。
そういえば、指導教員と学生が一対一で接する教科がある学校、特に音楽系でしたが、術科の先生が生徒に学校の密室(レッスン室)で、どんな指導をされているのか…問題になった事がありました。
一昔前の音高音大の先生方は、かつて自分が叱責され続けたために、それ用の「ポキャブラリー」や「相手にぐさっと刺さる態度」のヴァリエーションが抱負でした。同級生が先生に「このショパンエチュードは黒豹が疾走しているように弾いてほしいのに、あんたのは、まるで黒豚。」と吐き捨てるように言われてレッスンが終わった、と落胆していました。口が悪すぎて、いじめじゃないかと思われるようなこともあったようです。
近年は真逆になっています。「学生を指導してもよろしいが、叱責しないように」と学校側からお達しが来ていますので、学生は滅多なことでは怒られないし、大抵は教員側が我慢することになります。注意をするとかなりの確率で‘目の前で倒れたりする’(実は私も「私語の量が普通でない人」や「スマホで授業中ラインし続けている人」をちょっと注意したら、倒れられてしまいました。本当に軽くだったのに・・)ので「私語が多い」「勝手に退席する」「授業中に飲食をする」等など。見て見ぬ振りが多いです。
つまり、親から手が離れてきた10代後半になると、学校などの社会活動の中で、叱られるという経験が少なくなる傾向があるのです。社会に出る前にいっぱい叱られて打たれ強くなった方が本当はいいと思うのですが・・・

お子さん方にとって、ピアノ教室も基本的には楽しくあるべきだと思いますが、楽しくレッスンが受けられるために、ちょっと我慢して先生の話を聞いたり、少々気の乗らない練習でも頑張ったり、つまりは、ピアノの先生も親御さんと同じは無理でも、同じ目線で、お子さんお忍耐力を育てるお手伝いができればいいなぁと感じています。お子さんは「頑張ったらいいことがあった」という経験が大人より少ないので、目先の楽しくて楽なことに引きづられがちです。今どき二宮金次郎みたいな子も不気味ですけど・・・口手八丁で上手に頑張らせることが出来たなら理想的です。
とはいえ、大人の目から見て怠けているとか不真面目な態度に見えることがあっても、そのお子さん自身は精一杯やった結果の表現だったりするので、見た目の態度で怒ったり、いい子になるように指導矯正しようとすることは、私には中々できません。親御さんから見ると甘い先生かもしれませんね。
私は‘生徒さんのお母さん’から聞いた話を時々思い出します。その方はとてもピアノが好きだったそうです。ところが訪問のレッスンのピアノの先生が、レッスン中たっぷり出来ないところを叱責した後、子供部屋の襖一枚隔て客間で、延々お母さんにレッスン中ダメだったことを言いつけていたそうです。その方はいたたまれなくなって結局ピアノをやめてしまいました。切ないですよね。
出来るようになった事を先生が我が事のように喜ぶ・・・例えば弾けるようになって得意になっている曲があったら「すごいね!!弾けたね」って驚いたり喜んだり。褒め言葉を並べなくても、その方の演奏を聴いて思った事を、先生がちゃんと表現する事が、最高の褒め言葉になるんじゃないかな、って思います。
たとえお子さんであっても、年齢を経た方と接するとき自然にしているように、その方の学校生活やご家族との関係や他の習い事、諸々の頑張っていたり背負っていることに敬意を払うのが、お教えをする時に不可欠なんだろうと、未熟ながら思います。その上で、‘努力して出来る事が多くなってくる楽しさ’も経験させてあげたいなあと思うこの頃です。

2016.05.26│コラム
譜読みについて (大譜表とコード譜)

未就学児で習い始めの場合、どんな教則本を使ったとしても、先生やご両親がそばについて、音高や音価を少しづつ(人よってはあっという間に)教えてあげなければなりません。なぜかというと教則本がまだ完全に一人で読めないからです。最近はみんなおませで、保育園や幼稚園に通っている間に、平仮名の読み書きができるなる子が多くてびっくりしています。でも、「はい、これ読んできてね。」は、いくら何でもかわいそうですよね。というわけで、ちょうど3年から4年目の学習児童は大人と同等の語学力(あくまでもピアノ譜に対してですが)を有しているようになるので、MYMUSICでは「2分の1成人式」でおとな扱いとなります。
ところで世間では未婚率の上昇や、中々独立しない「パラサイト」が増えて問題になっていますが・・・・
読譜に関しても‘一人でもできるはずなんだけど、先生が一緒に見てくれないとやる気がしない、パラサイト’が、いっぱいいます。
忙しい会社員の人、残業続きで家で譜面なんて読む気がしないのでレッスン室で一生懸命覚えて帰る人や、ちょっとは弾く時間がありそうなのに、初めての譜面を持ってきて「先生、この曲弾けるようにしてください。」と言ってくる小中学生。譜読みにかける時間があったら、宿題をしたりお友達と一緒にいたいのでしょうけどね・・・
確かに先生は、今までたくさんの譜面と格闘しているので、生徒さんより目が慣れています。意識しないでもアナリーゼしながら譜面を見ているので和音進行で譜を読んでいたり、弾きにくいところも「音のグルーピングを変えると格段に覚えられて弾けるようになる」とか、手段を持っています。2分の1成人式を超えたあたりから大人の「パラサイト」は、真っ白から苦労するより、先生から先に手法を聞き出してなんとか楽をしようという魂胆見え見えです。というか賢いやり方かもしれませんね。

以上は大譜表での「書き譜」の場合。「メロ譜」をいきなり弾くのはそのための「仕込み」が必要になります。
高音部譜表にメロディしか書いてないのですから、コードから音楽の読み取って、音符が書いてない部分を自分で埋めていく勉強が必要になります。(MYMUSICでは、子供時代からピアノを習っている人には、コード表記に慣れてもらいたくて、楽典の教材は音名表記が「ABCDEFG」のアメリカのものを使っています。導入期には「ドレミファソラシ」の階名を書いてあげてますが、教本にはしつこく「ABCD」が出てくるので、知らず知らずに覚えていくようです。)
次にメロディに対して、コードから読み取った情報をいかに鍵盤上に配置するか、ボイシングですね。ボイシングか綺麗だと‘カッコイイ’サウンドになります、ダメだとダサくなります。こう書くと、センスの問題みたいですけど実はセオリーの問題です。つまりは「こうすると素敵だよ」と言われている「押さえ方」の理論を知っていくことが、譜読みの勉強になってきます。
大譜表に全部書かれたものと格闘するのか、書かれていない部分で格闘するのか・・・
どちらにしても頑張って弾けるようになったら、嬉しいですよね。

2016.05.23│コラム
子供と読譜力
救急車で搬送されたりして、コラムを書くのが滞ってしまいました・・・

ちょうど習って3.4年目くらい、楽譜も複雑になり、曲も長くなってくるころの、子供達にとって、読譜は大変な作業になってくると思います。
とは言っても、先生頼りにならないで、ある程度は独力で譜面を読む週間や苦なく読譜に取り組めるように持っていきたいです。
で、小学3年生くらいになったら、読譜力を上げる事も必要だです。幼稚園や保育園児の時代に一生懸命覚えた音価や音高を読む力プラス、音楽を読み見とる力をつけるため、もう一度頑張ってもらいたいのです。
「線と間」「隣同士、一つ飛ばし、同じ音」など、年少の時に覚えた譜読み「点」から「線」で読むようになります。つまり音の高さを音を一音づつ読むところから、前の音と次の音の相関関係で読めるようにしていく過程なのですが…
思い返すと…
自分が子供の頃は先生に逆らうなんで恐ろしい事は出来ませんでした。だから子供にとって無理難題を言われても、一生懸命こなすのみだったのですが。
先生が怖くない今の子供達は教室で自分の考えをハッキリ言います。小学生は大人の方よりも「考えたくない」「見て覚えたい」を露骨に表現します。どうやって弾くか、実演して見せてほしいとか、知らない曲は弾きたくない、難しそうな曲は嫌…グダグダ言うのも楽しみの一つらしいです。
自分が子供の頃を振り返ると、先生からは「片手ずつ譜読みして練習して、弾けるようになったら両手を合わせなさい。」と教えられていた気がします。
で、実際には自分がいつから両手一緒に譜読みするようになったか覚えがないのですか、結局は片手ずつの譜読みが面倒だったのだと思います。
片手ずつ譜読みして両手にする譜読みは、一つの曲で1右手2左手3両手と3回弾けるようにしなければならないので、二度手間どこらか3度手間なので良くない、とペースメソッドの先生に言われた事があります。
なるほど説得力がありますね。

今来ている子供達は、おうちで譜読み派とレッスン室で譜読み派がいます。レッスン室派は、練習室で譜読みして自力で弾ける目処をたててから新譜をお持ち帰りする、ある意味慎重派です。おうち派は、一人で考え事をするのが好きな人みたいです。
レッスン室派の子は、読譜力がどれだけ身についているか先生が把握出来るので、足りないところを指導しやすいのですが、自力で頑張るより先に先生に頼ろうとするので、独立して譜読みをする習慣がつきにくいです。おうち派は、レッスンに持ってきた時にはすごく弾けていても、それまでの一週間、家で七転八倒してるかもしれなくて、その把握が難しいです。万が一間違えて弾いてきたのを治すのも大変だし…
譜読みは替わってあげられないので、「だんだん難しくなるけど、先生が助けてあげるから頑張ろうね。」くらいの声かけくらいしか出来ないですよね。

2016.05.22│コラム
指のコントロール

ピアノを弾いていると、たまに気になる「指が強さ」。指が強いと良いことが有りそうですが、考えてみると指が強いは何を定義してあるのか、良くわからなかったりします。
ジャズジンガーで弾き語りをする綾戸智恵さんは指立て伏せてをしたと聞いたことがあります。私がやったらたぶん指が折れる前に心が折れて挫折すると思います。ジャズの人のタッチは強そうですね。ジャズ屋さんには、スタインウェイのピアノが避けられているそうです。何でもキンキンし過ぎるとかで。スタインウェイよりベーゼンドルファーかな?らしいです。
(クラシックを弾く人はとりあえずスタインウェイですよね。反応が良いしコントロールがしやすい、音が華やか、と三点揃っていますから。)
では、クラシックの人は指がポピュラーの人より弱いかといえば、絶対そういうことは無いと思うのです。西洋で伝承されてきたスタイルの上に演奏しなければならないので、打鍵のスピードや強さだけでなく、求められているのは、「意思通りコントロール出来る指を持てること」だと、あるテレビを見番組を見て思いつきました。

わんニャン倶楽部…
飼い主の言うことを聞かないお馬鹿犬の躾こーナーが人気のようです。お散歩中にリードを引っ張り走ろうとしたり、「スティ‼️」と言っているのに無視したり、挙げ句はちゃんと歩かないで転がったり。
まぁ、私の指みたいだわ…意思に反して走ったり転がったり、つまづいたり、止まったり。
そういえば今までも、A先生から「全ての音を自分の意識した通り、細部までコントロールされて発音できるテクニックを持ちなさい。」と、毎回のレッスンで念仏のように唱えられていました。
手は自分から生えている「身体の一部」です。もし「飼っている馬鹿犬」が「自分の手」と同じ問題行動をしたらどうでしょう、なんとか改善しなければと、解決策を模索する筈です。
単純なフィジカルなトレーニングだけでなく、自分の意思を伝える練習をする事も、積み重ねていけば良い指の訓練になるとおもいます。
クラシック的な指の強化は、「自分の意思通りにコントロール出来る指」を育てる事かもしれませんね。
話は逸れますが…
わんニャン倶楽部では、躾をして賢くなったワンちゃんが登場する一方、猫も出てきますが、扱いが大分違います。「猫付き旅館」「釣具屋で猫がいっぱい生まれました」「相撲部屋の運気を上げた猫」「お店の看板猫」「ネコ島特集」など…。
阿佐ヶ谷北一丁目のうなぎ屋「川秀」の猫も番組に取り上げられました。
番組では、猫に躾を期待しないというか、そこに居るだけの猫を映しておしまいです。何故でしょう、猫は思う通りにならなくても飼い主は許容してしまい、しょうがなくてネコに合わせた生活を送る傾向があります。
もし、犬か猫かを選択して生まれ変わるというのなら、猫になって人に飼われたいと思うこの頃です。
話が途中で無茶苦茶逸れてしまいました。すいません、続きはまた書きますね。

2016.05.17│コラム
JAZZの勉強 2

ジャズ理論は面白いです。勉強はすごく楽しかったです。
クラシックの和声学や対位法は到達すると本当に美しい世界がありますが、エベレストに登るような気になります。芸大和声(赤黄青)でも結構大変で、泣きながらレッスンに行っていましたが、アンリシャランの和声課題集に突入した時に先生のご都合が悪くなってレッスンの継続を断念。少々ホッとした気にもなりました。課題を解くことを中断してしまうと、後は感性が風化する一方です。
そういえば、クラシックを主に勉強する音楽大学は「作曲科」が楽器や声楽の「演奏科」から独立しています。職業として「作曲家」と「演奏家」が分離しているので、演奏科の人は、プロの作曲技法を演知らなくてもいい・・ということなのかな?普通演奏科の学生さんは、作曲技法に対しては、ほんの入り口(充分難しいですが。)しか教えてもらっていない状態でOKになっちゃってます。(もちろん、演奏家として活動をしていると、実存している作曲家の作品も演奏する機会があるので、勉強する必要も機会もあります。そういう人には、本当に頭が下がります。)
ジャズは使うところだけ勉強していればいいので、逆にジャズに触れている間は理論の勉強をしなくても、感性を忘れてしまう
ことはないし、演奏するのにとても実用的にできています。ということは理論を知らないと演奏できないということになります。前のコラムで書いた「JAZZは頭が良くて、勤勉な人のため音楽」ということは、弾く練習だけでなく、「要机上の勉強」という意味なんです。
1・反復練習で「指のテクニック」と「ジャズ的なフレーズ」を覚えていくこと
2・楽器を離れて、演奏の裏付けとなる「理論」を知ること
3・ピアノを演奏するためのテクニックの練習をすること
をバランス良く行えば、挫折しないで進めることができると思います。私はポピュラーの演奏の仕事をしていて、どうしても軽音楽の勉強しないといけなかったので、適当でもなんとか格好がつく状態にしなければなりませんでした。ジャズ理論を学生時代にかじっておいたのが、ものすごく役に立ちました。
私はクラシックとジャズの理論を行き来して勉強したので、両方の発想の違いもわかってきました。だからジャズのチャンネルに合わせて音楽するとスウィングするし、クラシックの方のチャンネルを使うとクラシック風のテクニックになります。
発音(タッチ)もまるで違ってきます。ちょっとコウモリみたいですが、両方のジャンルが、なんとなく出来るくらいわかっていて、楽しめるのはいいことだと思うのです。

もし、クラシックが楽しめるような下地があったら、ちょっと手や足を伸ばして、ジャズやポピュラーの楽しみ方も知ると、より音楽が楽しくなると思います。

2016.05.15│コラム