JAZZの勉強

眉間に皺を寄せたトレンチコートの黒縁メガネのサラリーマンが、タバコの煙が「モクモク」している暗くて狭いライブハウスで、ニコリともしないで「黙々」と演奏を聴いている…四半世紀前のJAZZはそんなイメージだったそうです。
JAZZは自由な音楽みたいですが、頭の良い人がする音楽です。それから、間違いなく勤勉な人がする音楽です。趣味でもクラシックから転向するプロ志向の方も、ロッカーだけど知っておきたいなぁという人も、かなりの量を勉強する必要があります。JAZZはコツコツ長い練習時間を必要とする音楽なんです。「なんちゃってJAZZ」ですらです。いっぱい市販されている「書き譜」を用意すれば何とかなりそうですが、そのまま弾いても不思議な音楽になってしまう事があります。最近の楽譜はCD付きなので、自分が楽譜を見て弾いた物と模範演奏の違いに唖然とする事があります。
とりあえずJAZZにしたいなら、スウィングしなければなりません。この予備知識があると、結構それらしく聴こえます。が、自分の音楽がJapaneseな感じ、そう「なんとか音頭」に聴こえると修正の仕方が分からなかったりします。
JAZZを弾くには、発想の転換が必要です。まず好きになる事が大切です。スウィング感やコード進行や四度堆積和声、テンションノートがカッコ良いと思えるることが、上達の第一歩です。カッコ良いなと思ったら、真似して覚えます。その真似の仕方が効率が良いと、沢山の手数を覚え られます。そして「あたかも自分自身が作り出したかのように」弾くわけです。ここまで来ると一応なんちゃってJAZZからは卒業証書が貰えそうです。

JAZZの歴史はクラシックより短いです。ニューオリンズで19世紀末から20世紀初頭に発祥したと言われる、アフリカ系の黒人の民族音楽とヨーロッパ系の白人音楽の融合とされています。とても短い歴史なのに、クラシックに、追いつけ追い越せとばかりに発展を遂げ、30年前には既に無調になって、フリーJAZZが出現しました。
クラシックの純音楽の作曲家と同様、これ以上新しいものを自分が開発するのは多分無理です。だから、一通りできるようになったら、自分の好きなアーティストやスタイルをとことん勉強する方向に進むんだと思います。
JAZZを弾けるようにしたいなら、
ステップ1.自分が弾いた曲が自分で聴いてJAZZに聴こえる。
ステップ2.(たとえ書き譜であったとしても)書き譜を弾いていないように聴こえる。
くらいから取り組むと楽しいと思います。
矢野顕子さんも清水ミチコさんも本当に楽しそうに演奏しますよね〜。実は、私は彼等の音楽もJAZZだと思っていて、とても憧れているんです。矢野さんはバリバリのJAZZプレーヤーと共演できるので、ピアノ演奏的にはJAZZプレーヤーになるんでしょうね。

2016.05.11│コラム
素直さと謙虚さ
すいません、今回のコラムはピアノとは直接関係がないかなぁ・・。

素直な人は上達が早いと良く言われますよね。それについて。
歌のT先生は「家で練習してくるな」と言われます。理由は、勝手に練習して変な癖がついたのをレッスンの度に治すより、毎回真っ白忘れてレッスンに来てくれた方が、よっぽど進歩するから。真っ白と言っても本当に体感して身についた事は覚えているので、その微微たる蓄積は馬鹿にならないそうです。
太極拳の先生も同じ事を先週言われました。
正しい道筋を指導して、ちょっとはできるようにして帰しても、一週間たったら、バリバリの自己流でバッチリ固めた姿でお稽古場に戻ってくるんだそうで…
太極拳の先生は、どんな人もお稽古の内容を練習場に置いて帰ってしまう…と言ってました。しかし、中にはお持ち帰りの上手な人がいて、えらく早い勢いで上手くなる人がいるそうです。そういう人は色々工夫をしていて、コッソリ黒板を写メしたり、ポケットにメモを忍ばせていたりするんだそうです。

レッスンからレッスンの間、自分の思い込みに囚われないように、過ごす事は大変ですね。私は自信がないので、歌も太極拳も家では殆ど練習しません。
良い師匠に巡り合っても、その出会いを生かせない人もいます。テノール歌手で声に恵まれていて、お弟子さんを育てる事でも実績のある方でしたが、縁あって伴奏をさせていただいた事がありました。幸にその方の師であるウイリアム・ウー先生のレッスンに同行する事ができました。
そのテノールの方は、自分の声に溺れて、先生の言われている事を素直に聞けず、自分を変える事が出来なかったので、何も得られず先生の元を去って行きました。何故か、ウー先生は私の事を可愛がってくれて、あなたは良く分かっていますね。あなたも歌いなさい…と言ってくださったのを嬉しく思い出しました。

先生に言われた事の「端だけ」聞いて、理解した気になる事があります。ちょっと聞いたくらいで、分かるはずはないのです。「私も思ってた❗️」とか「知っています❗️」とか、既にその時点で違う事になっているのです。言われた事を自分の曲解なしにそのまま受け止めるという事は、大変難しい事なのだと、肝に銘じなければいけないですよね。
ウー先生は亡くなられていました。そろそろご高齢なので、もしやと思っていましたが…自分が去らなくても、先生が去ってしまう事も有ります。そうなると、もう教えを受けられなくなります。先生とのご縁もいつまで続くかわからないと思って、一瞬一瞬を大切にしたいです。

2016.05.10│コラム
レッスンの大切さについて

自分の身体に対する認知力がどんなものだか。…意外と意識しないで過ごしていますよね。今、膝が曲がっているか?肘が曲がっているか?とか。身体に近い部位の大きな関節は分かりやすいです。
では、バレエなどのお稽古を受けていると思って下さい。先生が指示をだします。「はい!では顔は正面で真っ直ぐ立ったまま、右脚を腿付け根から真後ろに上げて下さい。」「その時に足首や肘が曲がっていませんか?気をつけて。」と言われた瞬間、なんの予備知識が無い集団の場合は約半数の人が後ろを向いて、先生から「顔は正面です‼︎」と怒られます。
ボディテクニックの先生が、「なんで足を後ろにあげるのに、いちいち振り返るのか、訳がわからない。」休憩時間にこぼされました。先生は親子二代バレエダンサーで素人感覚がわからないのです。私が「後ろに足を上げてしまうと、自分の足がどうなっているかわからなくて不安だから、見て確かめるんです。」と答えると「いちいち身体がどうなっているか見ていたら、姿勢が崩れるじゃないか。見ないと身体がどうなっているか分からないなんて、何処か身体が悪いか脳に障害でもあるのではないか…。」と絶句されましたが、訓練されてない人なら真っ当な反応だと思います

実は昨日の太極拳のお稽古、「自分の身体を見ない」「鏡を見ない」「他の人を見ない」で本当にコマ送り状態、身体がどうなっているか、しっかり認知してから次の動作に移ることを、叱咤激励されながら1時間以上も練習しました。…ということは誰かの見様見真似は出来ないです。ヤバイ!
シツコク認知させないと身体はキチンと反応しないのですよね。太極拳の先生もバレエの先生同様、「これだけ言っているのに、違うことをしている人がいっぱいいます‼︎」と大声を張り上げていました。

思った通りに身体を動かすことは難しいですが、正しいと思い込んでいる間違いを矯正することは、自覚がないので、自力ではほぼ無理です。どんな人でも肉体には癖があるので、真っ直ぐ立っていると思っていても、実は反り返っていたり…とか、するものです。
だから、長年培ってきた芸事のお稽古やレッスンに通う習慣は、自分の発想や理解の範疇を超えた物を教えていただける以外に、客観性を持ち、身体を労わって使うことの気づきになるので、やはり大切なことだと思います。
…太極拳で思い知りましたが、この様なお稽古は、忍耐力も試されますね。

2016.05.08│コラム
7月23日発表会のお知らせ

とうとう重い腰を上げて、会場を予約しました。サッサと行動すれば良いのに、いつもギリギリだから「この日空いてて良かった〜!」となります。新年会が終わったと思ったら、あっという間にゴールデンウィークまで終わっていて、2016年もあっという間に半年前過ぎてしまいそうな勢いです。だからと言って、それが腰の重い言い訳にはならないんですけど…
MYMUSICの発表会場は、長いこと新宿区市ヶ谷にある、トモノホールでした。少しステージが高くなっていて、
80席くらい。ホールの隣室は邸宅のリビング風の大きな控え室では、持ち込みしたお菓子や軽食も楽しめて、トイレも着替え用の楽屋もかなり立派で綺麗。お気に入りでした。ゲストハウスウエディングの演奏会バージョン、豪邸のピアノホール付きリビング貸切状態で、セレブ気分を満喫していました。トモノの時は私もしっかりロングドレスに着替えていたものです。
ところが発表会当日に空調が壊れてすごいノイズが出たのと、何を考えたのか発表会の最中に業者を呼んで直させようとして大混乱になったので、それっきり使っていません。それからは、発表会ジプシーになっています。
14年は阿佐ヶ谷からは 安近短 揃った、江戸川橋のピアノパッサージュで、開催しました。明るくて、音は良くなるし、床はフラットでなく、段差のあるステージ付いているし、ピアノは楽器店だけあって素晴らしい。ホールではなくて、元々楽器の展示場なんですが、パテントをしてホール状態にして発表会の間は貸切にしてくれます。だから関係ない人も知らなくて入ってきたりしました。
明るくて写真が綺麗に撮れて、外に音がだだ漏れとか色々有っても、私は気に入っていました。でも、控え室が狭いや落ち着かないやら、生徒さん保護者さんの評判はイマイチ。
昨年初めてKMアートホールで行いました。
100年前制作のマホガニーのスタインウェイ、かなり小ぶりです。癖があるかなぁ?と思ったら意外にも弾きやすく、音響も素晴らしい。妙にスタイリッシュな内装でなんか薄暗い…。が、13年夏に下見した時の感想。
地下のホールに降りるまではちょっと急な階段で若者向きな感じ、お祖父ちゃんお祖母ちゃんやゼロ歳児の弟妹連れのファミリーにはキツイだろうと思い一昨年は躊躇しましたが、実際15年に発表会をしてみると、なんだか居心地が良いのです。生徒さんの評判も良くゲストさんもえらく気に入ってくれました。
しかし、始まるまでは迷子の嵐、建物の前まで来て、うろうろ迷った挙句電話をしてくる人が後を絶ちません、実はここ、ビリヤード場だったのです。だから建物に「〇〇ホール」って看板も出てないのです。どうも地下ホールも元々プールバーみたいで、偶々レアもののピアノが手に入ったので、ホールにして貸し出すようになったみたいです。吹き抜けの上の階には本元のビリヤード場があって、折角たどり着いたのに階段を上がって、また外に出出ていちゃう人もいっぱいいました。
というKMアートホールですが、妙に人々の評判も良く、今年もお世話になることにしました。
7月23日はKMアートホール。どうか宜しくお願い致します。
2016.05.07│お知らせ
クラシックの歌い方

T先生の声楽のレッスンに週一回から10日に一回くらいの頻度で通っています。声楽のT先生は国立音楽大学音大に入る前から師事しています。学内や伴奏の仕事などでいろんな声楽家や声楽の先生と知り合いましたが、T先生とウイリアム・ウー先生だけが本当に筋道の通った教え方ができる人だと思っています。T先生は声のない私にも諦めることなく、声楽の基礎と歌い方の良し悪しをみっちり伝授してくださって、本来なら音大生でも難しいヴェルディやプッチーニのアリアを仕込んでいます。お陰様で、自分はさほどではないのだけれど、聞く耳だけは肥えてきました。
発音の仕方や立ち上がり方が全く異なる「歌」と「ピアノ」ですが、不思議なことに、「喉で押して歌う声」と「鍵盤を押して出す音」(えっ!鍵盤は押さないと音が出ないでしょ?って。でも、ぎゅうぎゅう押しちゃったら良くなさそうでしょ。)は同じような「音」になります。
歌の場合は音高で重心が上がったり下がったりすると良い歌い方になりませんが、ピアノも同じです。T先生から「飛び上がるな。」とか「同じ位置で歌え。」とか言われなすが、私もピアノのレッスンで同じような言葉が出てくることがあります。「今のは押したでしょ!」「飛び上がっちゃダメ」とか・・・。歌に詳しいU先生とも「歌の発声の仕方をピアノに当てはめるのは、旋律の歌い回しには良いかもしれないし共通点が多いかもしれないですね!」と盛り上がったこともあるので、あながちハズレではなさそうです。
クラシックの場合、男性は地声ですが女性は裏声です。だから2オクターブを超える声域が使えるのです。チェストボイスとヘッドボイスを混ぜながらうまく梯子を上ったり下がったりするように声を出さなければなりません。低音域はものすごく息が入りますし体力も使います。重い物を持ち上げる要領です。高音域のヘッドボイスは息があまり要りません。息を入れすぎると声が割れます。なので1音ずつ微妙に息の量を調節しながら発声すること、タイミングとリズム感でうまく体を操れば、声が大きくなくてもちゃんとした歌い方ができて、わかる人が聞けば「あの人はちゃんと勉強している、いい音楽を持っている。」と言われるけど、逆に声自慢でちゃんと勉強していない人は「いい声をしているけど残念ね。」と言われる、というのがT先生からいつも聞かされて耳タコになっている言葉です。

先日、何人かのソプラノ歌手の歌を聴く機会がありました。中音域きが「カスカス」でト音記号の5線から上の「ソ」の音くらいから響きがつくような発声をしている人がいました。チェストボイスの重心が上すぎで喉声になっていているのです。喉声で歌うと自分には良い声に聞こえますが遠くに届きません。ピアノ伴奏ならまだ聴こえますが、オケ伴なら全く通らないそうです。ソプラノの良し悪しは中低音域の声を聴けばわかります。(と、長い間レッスンに通って刷り込まれました。)「音域によって声質が変わるかどうかをチェックしたら、歌い手さんがどんな勉強をしたか簡単に判別がつきます。」って、T先生から言われていましたが、最近は私でもわかるようになってきました。それから先生がおもしろがって生徒に貼り付けているプロ仕様のテクニック、先生から自慢げに「プロでもできる人は少ないのよ。」と言われていますが、ちゃんとオペラを歌う人しか知らないのだろうなぁ・・と思うこの頃です。
私が ‘身の丈に合わない高度な声楽のレッスン’ で学んできた、歌うときの「感とリズム」と「体の使いかた」と「力を出すタイミング」は、声楽独特のものでありながら、道を先に辿っていくと他の楽器、ピアノ演奏にも共通した道に辿り着きそうです。だといいなぁ・・・

2016.05.04│コラム