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活動情報

コラム

脱力について その1

音大卒業生の方でしたが、在学中から手の故障に苦しめられていたこと、を本人から直接聞いたことがありました。その方の症状は「手を使おうとすると意思に反して親指が掌にくっついてしまう」でした。ですからひどい時はコップも持てなかったそうです。 また、私の音大の先輩は、リサイタルに向けた練習中に痛みが出て、それを我慢して練習したところ、掌が握れなくなり治療に長くかかっています。数年経っても自由にピアノを弾く事ができません。

 

手の故障は、ピアノは勿論、日常生活に支障をもたらすので、是非とも回避しなければなりません。

 

大学の術科の先生ですら、手の故障は聞きます。たいていの場合ピアノによるものでなく「ゴミ出しに行くのに、変な持ち方でいっぱい袋を持った」とか「重たいものをお盆に乗せて変な持ち方をして運んだ」という事でした。一流のアーティストなんだから、もっと手を大事にしてほしいと思います。

 

音大卒だと練習しての事故が多いです。正しいテクニックを持っていなくても、若くて無理がきくので音大には入れますが、無理を続けると故障するという事なんでしょうか。先生の場合はピアノに関係ない事がばかりですが、共通することは「身体、腕や手に負担をかけた事が故障に繋がる」という事だと思います。

 

疲労、または痛み→止める

 

が出来ない頑張る人が多いのがピアノを弾く人に多いのは事実でしょう。ピアノの練習もゴミ袋やお盆を持つのも、途中ても放棄する勇気が必要です。 とは言う私もゴミ置場までの行き帰りを考えると、如何に一つの袋にたくさん詰め込むか頑張り、いっぺんに沢山の袋や段ボールをいかに持つか。指先にまで袋をいっぱい引っ掛けて、一回で何とか済ませようとします。欲張りはいけませんね。 手の故障は使い過ぎる事よりも使い方の方が深刻だと考えています。上記の音大卒の方は、過緊張で手を動かす時間が長い事が原因でした。何をしていても痛くなったら直ぐに止めましょう。年賀状の書きも(笑)

譜読みについて

今練習している曲は大分弾けるようになってきたし、新しい曲をひきたいなぁ〜と思って色々楽譜を見るのはワクワクしますよね。並行してYouTubeで演奏しているところを見て、弾いた感じを実感したり、CDを聴いてみたりして、ある程度感覚を掴んでおく人も多いと思います。 でも聴くのは簡単、実際に楽譜を見ながら音を出して見るのは、とても初見に自信がある人以外大変な作業になりかねません。そんなのは嫌ですよね〜。

 

私も子供の頃から大学生くらいまで「なんとかサッサと譜読みを終えて、技術や表現の練習までたどり着かないと、次のレッスンまでに間に合わない‼︎」と焦ったものでした。そう、私は初見弾きに物凄いコンプレックスがあったのです。だから何回も覚えるまで弾いていました。 社会人になったら、その方法は時間がなくて出来なくなったので、譜読みから暗譜まで楽に出来る方法を一生懸命考えてました。その結果確信した事は「インプット(譜読み)が悪いとアウトプット(演奏、暗譜も含む)も悪い」という事です。ただ上手に弾けているかいないかと言うことではないのですが。

 

例えば… 最近では、カプースチンの譜読みと暗譜は苦労しました。カプースチンの書く曲は、構造が複雑な上ビックリする位音数が多く、しかもソナタ一曲で54ページ、7分くらいの四楽章だけで20ページの譜面でした。譜読みの最中は、トンネルを掘っている心境で、今でもふと気がつくとトンネルの中にいる心境になります。 フランス六人組のプーランク、イベールは楽しい曲の宝箱みたいで本当にお洒落な音楽だと思いましたが、洗練したパリのエスプリを表現するのは、譜を見た瞬間から敷居が高そうに感じられて、結局そのままの状態が続いています。 その後で譜読みしたシューベルトのソナタは、楽譜を見るなり早く音紡いでみたくてワクワクしながら譜面を見ていました。最初からとても親近感が湧いたのです。 だから、如何に新しい曲と出会うかが大切なんだなぁと思うのこの頃です。

シューベルト2

シューベルトソナタD664.の一楽章をU先生のレッスンに持って行きました。先生は「なんでシューベルト?」と不思議そうです。譜読みしたばかりの、然程弾き込んでいない私の演奏を聴いて「変わった弾き方ですね、普通もっと歌いあげたりするけど淡々としてるし、それからブレスが有りますね。」と言われました。

ピアノだと過剰に歌いあげる演奏が多いらしいです。歌の先生からドイツリートに関して耳タコになっている話のお陰で、自然とリートっぽい演奏表現が身についていたらしいです。ブレスに関しては、ピアノの場合息の表現をする人は珍しいと言われました。私が声楽も続けている事を話すと驚かれていました。単旋律の歌と違い、ブレスに関しては声部ごとに色々なタイミングで合わせなければならないのが難しいし、何よりカノンになっている部分は本当に弾きにくいです!と訴えると、それだけポリフォニー的に作られているのですね、との事でした。また、シューベルト の瞬間湯沸かし器的なところの表現が難しいです!と言いますと、先生は笑ってそんなところもありますね〜と仰られました。U先生は抑制の効いた伝統的な演奏をされる方です。私のこの日の演奏は好感を持っていただけたようです。

シューベルトは幼い頃の思い出と共にあります。のど自慢でクラシック好きの父親がドイツリートを良く聴いていました。シューベルトの歌曲を聴くと、家でゴロ寝をしている若い頃の父親の映像が出てきます。自分の勉強した垢が付いていない分鮮明です。

シューベルト

シューベルトは私にとって縁が遠い作曲家でした。ピアノ曲は本番にかけたこともなかったし、歌曲ときたら・・・大学受験から一筋に習っている歌のT先生は、根っからのオペラ歌手でプッチーニやヴェルディのアリアを教えるのがお好きです。声楽は、コーリューブンゲンからはじまってコンコーネ、サルバトーレマルケージ、イタリア歌曲集、トスティ、ドナウデイなど、イタリア歌曲に慣れ親しんだ後は、オペラアリア中心で、ドイツリートの勉強は覚えている限り1、2曲で曲名すら覚えていませんし、もちろんシューベルトをきちんと歌った記憶もありません。大学ではドイツ語が必修でしたが、数を3までしか数えられなくても単位が取れてしまって、ドイツ語に疎いのも心の壁になっています。ベートーヴェンもドイツ語脳が無いと弾けないのだと思いますが、そんな事を考える前に高校と大学の受験で弾いてしまいました。 シューベルトのピアノ曲は歌ものだと思います。歌の中でもドイツリートと同じ感覚で、お芝居をしてしまってもいけないし、激情を歌い上げるような感じでも無いと思うんです。どちらかといえば、美しい道に咲く花々をそっと愛でるような自然な感情を乗せるのが素敵なんだと思います。 ところでA先生に「ロマン派は弾かないのですか、このままだと手がカプースチンになってしまいます、レパートリーにシューベルトを入れて下さい」と。で選曲をはじめました。最初A先生は遺作のソナタを勧められましたが、子供の頃若い番号のソナタを一曲目弾いただけなのに2曲目が遺作というのも、なんだかもう終わっちゃうみたいなんで止めました。その後先生からは、私の身の丈に合うだろうと「即興曲」を勧められていましたが(遺作のソナタは荷が重いと思われたんでしょう)、それも自分的には身の丈ではなかったので、中学生高校生の頃好きだったソナタ、結局は遺作なんですが、もう一曲好きだったソナタを思い出しました。A先生にお伺いのメールをすると「イベール 物語」の時は返信に3日かかったGOサインが秒殺で返ってきました。 久しぶりにこの曲を聴いたり弾いてみると、カプースチンとは対極にあるように感じます。シューベルトとどのようにして親密⁈になるか、なれるのか、とても楽しみです。

カプースチンについて

ニコライ・カプースチンというロシアの作曲家をご存知でしょうか?10年くらい前から全音などで楽譜が出版される様になると、その「複雑で途轍もなく音数が多い譜面を超高速で弾く自作自演のCD」とともにちょっとしたブームになりました。しかも完全にジャズ語法なのです。このジャズサウンドと「高い山を登らずにはいられない」みたいなテクニック自慢の人には挑戦せずにはいられなさそうですが、やはりクラシックの人がジャズやロックへの理解なく譜面だけを追うと、ポピュラー世界な人が聴くとかなり気持ち悪いサウンドになりますし、そういう演奏もいっぱい聴きました。だから、自分が弾くのならちゃんとジャズの人に評価されたいと思ってきました。ちなみに私はカプースチンのジャズロック系の曲が好きです。 そんな時、モノホンのジャズピアニストの前でカプースチンを演奏する機会があり、「完全なるジャズ、これが書き譜になっているなら、自分も練習のために弾いてみたい」と言っていただきました。 カプースチンの自演の録音を聴くと、発音が根本的に違う様で、だからあの速さで演奏出来るのだと思います。どうしたらあのタッチになるのか!音の強弱があっても、全部の音をノンレガート、しかもマルカートで弾くと上手く真似出来そうだというところまでわかってきました。高速のフレーズと重音をマルカートだけで弾き続けるにはどんな練習が必要か…フランス留学した友人が、現地の先生からパァ✋の状態の指先一本ずつ鍵盤に叩きつけられながら一曲弾いたという話を思い出しました、また自分がA先生のレッスンで手を肩の高さと肘の間くらいに上げてから鍵盤に指一本ずつ叩きつけて超ゆっくりドビュッシーの映像を弾いたのも思い出しました。「牛牛」君という天才ピアニストが6歳でワルトシュタインを弾ける様にするために、お父さんが石版に牛牛君の手を腫れ上がるまで叩きつけた噂話(A先生談)も思い出しました。さぁ自分の指に情けは無用です。情けをかけると効果は半減します。強靭な指を作るには叩きつけられても耐えられる強靭な指関節と指先の痛みに耐えられる強靭な精神が必要な様です。今回の演奏では、カプースチンのファンで多数の曲を弾いているクラシックも素晴らしいけど電子オルガンの演奏者から「あなたの演奏はカプースチンそのものだった」と言っていただけました。 指が強くなったからでしょうか?そもそも本当に指は強くなったのでしょうか?自分の身体を使って人体実験した感が有ります。本当は生徒さんにやってもらって効果があったら自分がやりたいのだけど、生徒さんは先生の人体実験の効果があったところだけ欲しがります。

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