子供のリトミックと楽器演奏2
リトミックは明確な目標にたどり着くためのショートカットとして「利用」すると効果を発揮します。この場合の「効果」とは、「何かができる様になる」とか「能力が高まる」という定義です。または、アイデアが湧くキッカケになる事も含まれます。音楽に合わせて身体を動かしたら、普通に楽しいので、「楽しいと感じる」事や「ストレスから解放される」の様な事は外しておきます。
目的に特化したリトミックとしては、超アカデミックな海外のバレエスクールにリトミックのクラスが有ったり、演劇の練習にリトミックを体験する時間があったりもします。
日本のモダンバレエの草創期は、リトミックと舞踏の境界線が曖昧でした。
近年はリトミックが幼児の音楽教育のメソッドと思われがちですが、実はリトミックの要素の一部を拡大解釈して利用しているのです。で、他の分野でも同じ様にリトミックが行われているのですが、指導のされ方や内容は全く違ってみえます。でも、リトミックなのです。
ところで、このページを見ていらしている方で興味が有るのは「プレピアノレッスンとしてのリトミック」ではないでしょうか?
特に、お子さんにリトミックを習わせたいと考えていらっしゃるお母様。お話しさせていただくと、「今は難しいかもしれないけど、最終的にはピアノが弾ける様になって欲しい。」
リトミックしか考えてなくて教室に通われていても、1年くらい経つと「このままリトミックだけではしょうがないので、ピアノが弾ける様に指導して欲しい。」と、ご要望が変わります。
結局は100%の保護者様が「入り口がリトミック、そこから楽器演奏につなげたい」というお考えなのです。
現代のピアノ教材はよく出来ていて、わざわざリトミック教室に行って、「ライオンさん」と「ネコさん」になって二分音符と四分音符を歩き回らなくても、ピアノの教則本の音価の説明のところに「ライオンとネコのイラスト」が分かりやすく書かれています。クラップやその場ステップでも、充分子供達は理解できます。(ライオンさんとネコさんは例えの話です)
楽器演奏に繋げるリトミックが希望なら、その楽器専門でリトミックの素養がある先生から「ピアノ+リトミック」のレッスンをしてもらうか、リトミック教室とピアノ教室の両方を持っている教室に通うほうが、無駄なく無理なく楽器演奏にスライド出来るでしょう。
リトミックをする事が演奏や音楽表現をする上でのショートカット(近道)になれば良いのですが、リトミック専従の教室だと、リトミックのためのリトミックをして、かえって回り道になってしまう事もあります。
ただリトミックを楽しめば良いのか、演奏に繋げたいのか、保護者様やご本人の目的や目標を明確にしてから教室探しをすると良いでしょうね。
言い忘れました、この場合お子様の年齢は3歳から5歳くらいです。それ以下の年齢でしたら、保護者様と一緒に音楽遊びをするグループも良いですし、それ以上の学齢でしたら、いきなり楽器を習わせちゃったほうが良い…と私は考えています。(個人差はありますが、大抵4歳過ぎれば、充分ピアノのレッスンを受けられるように成っています。)
ちょっと極論気味になりましたが、教室探しの参考になるになれば良いかなっと思います。
2016.04.03│コラム
子供のリトミックと楽器演奏
子供のためのリトミック。なんの目的でお稽古するのでしょう?
情操教育だったり音感教育を謳い文句にしているところが多いと思います。「音楽遊び」を中心として、「イメージを体で表現」したり、「グループで表現」したり、「即座に反応して表現」したり・・。
結局のところ頭の中でぐるぐると内観しているだけでなくて、他の人にも即座にわかってもらえるように反応することができると、リトミック的には出来の良い子になりがちです。かえって言動や行動が年齢より大人っぽい子はノリが悪くて「周りと同調するのに苦労したんだけど。」後で語っていた・・なんて小耳に挟んだことがあります。
リトミックに来て、楽しそうにはしゃぎながら動き回っていれば、お母さんも連れてきた甲斐がありますが、せっかく来ても泣いちゃったり、怖がってお母さんにしがみついたままで終わってしまっても、まぁしょうがないかな・・くらいでちょうどいいと思います。
リトミックの大きな柱の一つに「音楽による即時反応」という要素があります。お受験でのリトミックは感受性を見ているだけではなくて、「大人の指示に正確に反応して行動できるか」を見られているのかもしれません。療養の施設では「赤信号の絵が出て音楽が止まったらストップする」「青信号を見たら歩け」みたいな訓練っぽいことをリトミックと称して行っていました。
「四分音符で歩け」「二分音符でゆっくり歩き」「八分音符で走れ」・・あんまり音楽的でも芸術的でもない代物です。動きのためのピアノ伴奏、「音価やリズムが固定化した和音の羅列みたいなもの」は音楽とは言えないような気がします。が、大学のリトミックコースの適性試験はこんな調子でした。しかも、17歳18歳になってもできない人がいた!?私のグループの中で一人だけですが、ずっと走っている人がいました。音大受験生でもこの程度です。まぁすごい前の話ですが・・
大人でリトミック経験者、(例えばリトミック指導者育成コースに所属しているような)で、リズム感がない人もいます。実際にピアノを弾かせるとリズム音痴だったりします。何故なら楽器演奏ではリトミックで養ったくらいのリズム感では役に立たないからです。
音楽に合わせて「1、2、3、4、」とカウントをとったり手拍子したりすらできなかったら、確かにリズム感がないです。リトミックのように大きく体を動かすことでリズム感を養えるでしょう。
しかし、一般的にはそれくらいできる人が多いです。それが演奏で発揮できない場合のリズム感をリトミックで鍛えることは不可能です。楽器は微細な筋肉を連動して演奏します。大きな筋肉を大雑把に使ってステップするような「リズム運動」をすると楽器演奏に必要なタイトなリズム感は失われがちです。私はリトミックを経験して「大学生になって、こんなことはすべきではない、自分の音楽に悪影響があるかも」と思うようになりました。
リズム感を向上させたかったら、自分が上達したい楽器を使って鍛えなければいけません、扱う楽器によって筋肉の感覚が違うからです。歌うのか、息を使うのか、弦を弓で弾く(ひく)のか指で弾く(はじく)のか、鍵盤をタッチするのか・・
リトミックのためのリトミック教室が花盛りです。が、音楽と一緒に体で感じるリズム感を経験させてあげたいなら、ピアノなどの楽器に併用してクラシックバレエや各種ダンスを経験させてあげた方が良いような気がするこの頃です。
長い間、大学のリトミック部門に従事しての結論なので、自分自身がとても残念な気がします。
2016.04.02│コラム
指導者が演奏すること
個人のピアノ教室は、学校の授業のように決まったカリキュラムが無いので、どうしても「今、自分が一番興味がある事」が教えの中心になりがちです。
A先生は「本番での自己解放」かもしれないし、U先生は「楽譜を初めて見た瞬間から本番まで、全て音楽を楽しむ時間にする」かもしれません。
A先生からは、本番で頭が緊張しても仕方がないとして、身体は緊張しない様にすることが大事だと、普段からの練習でも、如何に身体をリラックスしながら動かすか心がける様に、と言われました。
U先生の言われる通りにどの瞬間も音楽を楽しむなら、どの瞬間も緊張感を伴った筋肉の使い方を避けなければと思います。
私が身体の力みを取り除いたり、頭が緊張しない様に常に心がけるのは、先生方の教えも有りますが、本番やステージの怖さが身にしみている事も大きいです。
ところで、先日読んだ「ピアノ〜大研究」シリーズの本では、優秀な子供を育ててコンクールに出して切磋琢磨させ、通いきれない年齢になったら、教室から卒業させる様です。が、本を読んで先生ご自身が、どんな音楽を奏でるのか、どんな音色でピアノを弾くのか、何も聴こえてきませんでした。
対称的に、先日出演させていただいた「さわらび会」では、先生方も生徒さんと一緒に舞台に立つのが慣わしになっています。
生徒さんは、ピアノ教室卒業もなく受験の間少しお休みしても、無事合格したら戻って続けて、お母さんになっても、お父さんになっても、教室と供にいらっしゃる方も多いみたいです。
先生が常に輝いて演奏している、その姿を見せながら、生徒さんにご指導される…その伝統が続いて、発表会だけでも54年間、毎年欠かさず行えるのは本当にすごい事です。
「さわらび会」に出演でき、会の生徒さんや先生方と一緒に演奏させていただいたおかげで、前述の本を読んだときのモヤモヤ感が払拭できました。
「練習させる、能力をつけさせる、頑張らせる、」先生でなくて、常に生徒さんと一緒に、できれば生徒さんより一歩か半歩でも前に進んで、勉強して経験して、そうやって得たものを、生徒さん方と分かち合えるような先生であり続けたいなぁと・・今回あらためてそう思いました。
2016.03.31│コラム
緊張を感じながらのパフォーマンス
先日、四谷区民ホールで「さわらび会」というA先生関係の発表会に出演してきました。元々A先生のご親族で、子供時代からの先生が「さわらび会」を主催されていたのですが、恩師のその先生は亡くなってしまい、音楽家であり、また優れた指導者でもある、2人のお嬢様方が後を継がれました。なんと今年は「第54回」です。
この会は4歳のお子さんからプロの演奏家までが、順々に演奏するのですが、その子供たちが本当に堂々として上手なのです。幼い頃から一緒に練習してきた仲間がいることはすごいことで、中高校生大学生くらいになると本当に和気藹々としていて、リハーサルで集まっているだけでも楽しそうです。いい教室だなぁと思います。
私は社会人で、国立音楽大学でピアノを弾く仕事に従事していたことから、プロの演奏家が出るグループの最初の方に弾かしてもらっています。なぜか妙に緊張する雰囲気で、個人のリサイタルや沢山のアンサンブルの仕事をされている先生方でも、お伺いすると「さわらび会は本当に緊張する」のだそうです。私も周りのレベルが高すぎて、すごいプレッシャーです。
本番でミスタッチ、ミスノートがあったら「死んでおしまいなさい!」「お死に!」(オネエ言葉で怖さ100倍)くらいのことを言う先生が音楽大学には大勢いました。大学受験や学内の試験でミスタッチは点数を引かれる恰好の対象になります。今でも “音楽性より前に完璧さを求められて、のびのびと演奏できないのはつまらない派” の先生は学内では少数派なんでしょう。
A先生は ‘完璧な暗譜’ と ‘ミスのない演奏’ ‘細部まで練られた音色’の3点はまず要求されますので、家で練習している時もどこかで常に頭に残っていておろそかに音を出すことは無くなっていました。良いアウトプット(暗譜での演奏)ができるようにするためのインプット(譜読み)の方法を模索する習慣もつきました。厳しく指導してもらい本当にありがたいことです。
ただ、A先生にとって一番大切なのは、‘完璧な暗譜’ と ‘ミスのない演奏’ が当たり前にできた上で ‘本番でどれだけ自己を解放できるか’ です。
私は本番でピアノの蓋にピアノの弦や共鳴板が写ってるのを見ながら弾くことがあるのですが、気持ちが上がるとどうしても視線も上に上がっていきます。今回の本番中も蓋の裏を見て、その先の天井まで視線を上げるかどうか・・戻ってこれなくなっちゃうと怖いのでやめました。が、恐ろしいことに、その時の所作まで見られていて、「自己解放度が120パーセントでなかった」とのご指摘がありました。
昨年の会では、ミスタッチを全部数えられて「あんな箇所をどうして外すんですか?」とさらっと言われて終わったことを考えると、私なりに一年で進歩したのかもしれません。それにしてもA先生も出演直前であることを考えると、こんなにきちんと観て聴いていただけること、本当に感謝ですね。
「さわらび会は」自分自身の成長度合いを測るいい機会になっています。とても怖い本番ですけど。地に足が付いていないような気がして・・・と一様に出演する方がおっしゃられます。本当に9階にあるホールなんです。もう大分慣れましたが・・・新宿御苑の桜は三分咲きでした。
2016.03.30│コラム
様々な運動の経験はやっぱり必要?!
私はダルクローズメソッドを音楽大学で知りました。即興演奏や作曲に興味があって、作曲科を受けると勉強が限定されそうだし、とりあえずのピアノ科とかけて受けるのなら、国立音楽大学のリトミック科(通称)を受験することにしたのです。体育の時間は着替えるのすら面倒で大嫌い!まさか大学生になって、こんなに体を鍛えさせられるとは大誤算でした。一年生の夏休みまでに、猫背が矯正されるほどの「地獄」を経験し、身体に対する考え方も180度変わってしまいました。
高校生まで、「音楽と身体が影響し合う」という発想はありませんでした。「大きな筋肉運動の経験から微細な筋肉の運動に繋げていく」。例えば、足で歩いたり跳んだりする筋肉の感覚をピアノの鍵盤上の手の筋肉運動と関連して筋肉の感覚で音楽の表現の幅を広げるのは、とてもわかりやすいと思います。
私は、バレエとヨガだけだったのですが、あまりにも体が硬いのと、バランスをとる体幹の筋力がなさすぎたので、ご近所、中野区鷺宮駅前のフィットネスクラブに通うことにしました。春先になると股関節が痛くなる症状が続きバレエを中断、股関節に無理のないプログラムが有るフィットネスクラブだけ続いていました。
スタジオプログラムには、様々な動きが体験できるので、つまみ食い状態でしたが経験のなかった「ヒップホップ」や「ソウルダンス」「ボクササイズ」で今までなかった感覚を使ったり、振り付けを一生懸命覚えたり、脳トレにもなりました。
インストラクターの先生は、私のことを「何か音楽関係の人だろう」と思ったそうです。と後から聞きました。
先生とあらたまってそんな話を何故したかと言いますと、その古ぼけた、料金もおやすく通えたけど、ロシアンルーレットくらいに命がけで通った(躯体が古すぎて次の大地震があったら必ず天井が落ちてくると想像できたため)フィットネスクラブが3月末日で閉館してしまうからでした。
次はどこに通うのか・・会員の方々の話題もそればっかりです。私も上手に利用して、レッスンでも生かして来ていたので、フィットネスクラブの閉館は寂しいし、ちょいと痛いです。思った時に色々なダンスや運動ができる場所はやっぱり必要かな?健康のためにも続けた方が良さそうですけど・・・
2016.03.29│コラム